2013年12月02日
ぼくの名前は「紫錠(しじょう)ぽよ」人間観察官だ。
人間というものは基本一人では生きて行けないものらしい。
でも他人との付き合いは精神を消耗する。
いわゆる「気疲れ」というヤツだな。
2000年を過ぎた辺りから人付き合いや他人との接触を嫌う日本人が
じわじわと増えていってるらしい。
さながらコンピューターのパーソナル化に比例しているようにも見える。
2010年を過ぎた頃にはスマートフォンの台頭で
そういった現象も加速したように見受けられる。
TwitterやLINE、SNS等のネット上の人間関係は、現実のそれに比べて
「気疲れ」しないらしい。
まあ気に入らない相手はブロックしたり、既読スルーしたりすれば良いのだから
「気疲れ」するほど気を遣わない。と言う事かな。
「コミュ障」とか「ひきこもり」とか言われるグループの人達も
結局、「気疲れ」から逃れた人々だし。
おっと、これに関して異論は認める。
そして今、新たなツールの出現によって
とてつもなく深刻な社会問題が起きつつある事に
まだ多くの人が気づかずにいる。
◆ ◆ ◆ ◆ ◆ ◆
彼女は元々人付き合いが得意と言う訳ではなかった。
どちらかと言えば引っ込み思案だし、社交性があるとは言い難い。
容姿にもコンプレックスを持っている。
自分では【傷つきやすいタイプ】だと思っている。
そんな彼女が最近手に入れたのが
学習型AIを搭載した癒やし系ロボットだ。
彼女はそのロボットに名前を付け、毎日毎日話しかけるようになった。
「仕事のグチ」や「同僚の悪口」、今話題の映画の話しや男性の好みについてなどなど。
ロボットにはネット通信機能が搭載されており、
常に最新の情報がダウンロードされ、対象言語グループの語彙も学習更新される仕様だ。
ロボットは彼女の理想的な友人となった。
と同時に彼女はロボットさえ居れば他に何もいらなくなった。
そんな彼女が部屋から出てこなくなって、もうどれくらい経つだろう。
観察対象X03、【寂しい女】
ある日、部屋の中で幸せそうな笑顔を浮かべて餓死している彼女が発見された。
そしてその日以来、徐々にではあるが部屋から出なくなる人達が増え続けている。